
実を言うと、これを買ったときはまだ「スイス・アーミーナイフ」という言葉は知っていても、メーカーが2社あることを知らなかった。だから単純に予算と装備されているツールのバランスで選んだナイフ本体がウェンガーで、タッチアップシャープナーが付属しているのが気に入って買ったケースがビクトリノックスと、ちぐはぐな組み合わせになってしまったのだが(どうりで買うときに「これでいいのか?」と念を押されたわけだ)、全然気にならなかった。というより気付かなかったのだ。
そして、グリップにピンセットとつまようじが仕込まれているというのも、購入後かなり時間が経ってから気付いた…つまり、ほとんど予備知識が無かったのだ。
逆に言えば、店頭に並んだナイフを先入観を持たずに見比べて、本当に自分に合った物を選べたと言うこともできるだろう。グリップの太さや掌への収まり具合がしっくりとして気持ち良い。
と書いたものの、いつ買ったかが思い出せない。上の写真を撮ったのは1985年の晩春の頃だし、1983年の夏はまだオピネルしか持っていなかった形跡があるので、この2年のうちに買ったのだろう。上司と東京に出張した夕方、まだ他に寄る所がある上司と別れて新宿のICI石井スポーツあたりで…あ、不確かなのにこんなことを書いたらこれが記憶として残ってしまうな。

機能は下に別記したとおりだが(キーリング&チェーンが機能なのかは「?」だね)、平型ドライバーはスペースを節約する凄いアイデアだと思う。木ネジの絵が刻印されていなければ、これがプラスドライバーだとは気付かないだろう。機能も遜色ないし、実際このナイフではこれが一番使ったツールではないだろうか。
ノコギリもあなどれないツールだ。刃渡りが短いから、そもそも大きなものを切るには無理があるが、手で折るのに厄介な枝などを切るのにちょうど良かった。
まぁ、バックパッカー向きといっても、ウィルダネスを何日も旅する状況にあるわけでもないオートキャンパーにとっては、キャンプサイトで退屈しのぎに拾ってきた木片を削って遊んだりグッズのメンテナンスに使う程度で、気軽にポケットに入れておけて、これ一本で結構まかなえてしまえるのだった。

ウェンガーとビクトリノックスの大きな違いは「缶切り」だ。ウェンガーは手を怪我しそうで怖いと言う人がいる。自分も後にビクトリノックスを使って確かにもっともだと思ったが、初めがウェンガーだったせいもあって、この鋭く尖った刃先が気に入っている。缶に深く突き刺すと抜けなくなって困るのだが。
スイス国旗をデザインしたマークもウェンガーのほうがシンプルで好きだし…総じてウェンガーに肩入れしてしまう傾向があるのは、ビクトリノックスのほうが名前が通っていることに反発してウェンガーに対する判官びいきなのかなぁ。
そうだ、ナイフとは関係ないけど一時ウェンガーの腕時計を持っていたことがあった。長針短針がナイフのブレードと赤いグリップの形になっていて、まるでナイフ屋の看板のようにブレードが開いたり綴じたりしながら時を刻むものだった。残念なことに軸を傷めて壊れたときに「国産とは部品の形が違うので修理不能」と宣告されてしまった。
今は腕時計そのものを使っていないのだけど、もう一度あれを見かけたらぜひ買いたいと思っている。
ウェンガー
(購入年不明 1983-1985頃?)

機能12種類:ナイフ、缶切り、栓抜き、ワイヤーストリッパー、
ノコギリ、平型ドライバー、マイナスドライバー、
キーリング&チェーン、キリ、ワインオープナー、
つまようじ、ピンセット