
いつだったか、久しぶりに雨のキャンプになった。いつも車の座席の下に転がしてある雨具を出してきて着ようとしたら、そのバリバリという音を聞いて友人がニヤリと笑いながら「
ハイパロンだね」
これを買ったのはもう10年以上も前になるだろう。そりゃぁ当時から
ゴアテックス製の雨具もあったが、今以上に高価に感じたし、だいいち、それほど雨具を常用するとは思えなかった。実際、平均して年に一回くらいしか使っていない。それだったらそこそこのものでも充分ではないだろうか。
もちろん、濡れによる体温低下が生死に関わるような場所へ行くのなら、たとえ一生に一度しか使わなくても必要な性能を備えたものを用意するべきだと思う。しかし、ぼくの場合はふつうにキャンプやハイキングをする程度で、それに義理がない限りは初めから土砂降りの時には出かけないので、極端に言えば100円のビニール雨具でも充分なのである。雨の中でそんなに激しい動きをすることもないので、それほど蒸れ対策を考慮しなくてもよいだろう。とはいえサラッとした着心地がよいのは言うまでもない。自転車やバイクに乗るわけではないから、動きやすさを追求しなくてもよい・・・等々それでも一応考えた末にハイパロンというゴム引きのレインコートタイプのものを買うことにした。これなら羽織るだけで腰や尻までカバーできるので、セパレートタイプのように雨ズボンを履かなくても済む。あれは股間が蒸れる上に、あわてて履くときに泥靴で内側を汚してしまうので(ぼくだけかな?)好きではないのだ。
そうは言っても、雨足が強くなるとズボンは必要になってくる。直接雨がかからなくても、地面からの跳ね返りやレインコートの裾からしずくが垂れてくるものだ。
そこで、レインコートと併せてレインチャップスというものも買った。のちに辞書で調べたら、西部劇でカウボーイが履いている革のオーバーズボンをチャップスと呼ぶのだそうだが、まさにあんな感じの「足だけ」の雨ズボンである。もちろんカウボーイのようにぶかぶかではない。
両脇の紐でベルトから下げるようにして留めるのだが、足だけであるから股間の蒸れがない。これは快適である。
雨の日だけではなく晴れた日だって、例えば朝露で濡れた草原を歩くときにもこれは使えて、そういうときにはなおさら「足だけ」というのが快適に感じるものである(ただ、この姿を見た友人からは「グロテスク」だという声があがるのだが)。こういう使い方ならスパッツを使っても良さそうだが、ショートパンツにサンダル履きというキャンプの散歩時では大袈裟になってしまうのである。なにより、畳むと胸のポケットに入れてしまえるというのも手軽なのだ。
・・・と褒めていながら、これを使ったのはまだ数回で、ここ7、8年にいたっては袋から出した記憶さえない。まぁ、それだけレインコート一枚あれば充分な程度の雨にしか遭っていないと言うべきか、大雨の日は外に出ないと言うべきか・・・。
レインコートとレインチャップス、それぞれ別個の商品である。ということは色違いで買うこともできるのである。ぼくはグリーンのレインコートにタンのレインチャップスという組み合わせにしている(結構地味である)。いかにも雨具、という風には見えないので、ちょっと気に入っているのだけど、他に使っている人を見かけないのは不思議なのである。もっと普及しても良さそうなんだけどなぁ。
(註:この文章を最初に書いたのが1995年頃である。その後ほとんど着用することもなく、それでもクルマの中に常備しているのだが、レインコートを広げると当時以上にバリバリと音を立てて、ゴムが粉となって飛び散りそうで怖い)