
先日、作家の森村桂さんの訃報に接しました。森村さんのイメージと言えば、なによりも「お菓子作り」というのが頭に浮かびます。まだ日本の家庭の台所にオーブンというものが無かった時代です(キッチンに組み込まれた、という意味で限定すれば我が家には未だに無いが)。当時は
「天火」と呼ばれるガス台の上に載せて使うオーブンが使われていました。彼女はそれが欲しくて欲しくて仕方なかった…というエピソードが綴られた作品が記憶に残っています。
近年ではダッチオーブンが流行っていますが、一時はアウトドアで使うオーブンと言えば、このコールマンのキャンプオーブンでした。結構憧れたものです。まずツーバーナーに憧れ、次にこれを載せて使うことに憧れる…しばらく前に損保会社のTV-CMでも、湖で魚釣りをしている主人公の傍らにオーブンを載せたツーバーナーが置いてありました。
憧れて買ったわりには、実は意外と安っぽいつくりです。最近のモデルは角を丸くしてあって高級感がありますが、ウチが買った頃のはブリキ細工の折り畳み箱。角が尖って怪我しそうだからヤスリで削ったりしたものです。熱を受けたり手で押さえつけたりしているうちに少し歪んできて組み立てがスムースに行かなかったりで、希望小売価格が12,000円でした(9,600円で購入)。華氏表示の温度計が摂氏表示に変わったからというわけでもないでしょうが、前年までは10,000円だったのにね。いずれにしてもずいぶん割高です。

日本人はオーブン料理と言うと、手の込んだ高級なものというイメージを持ってしまうのでしょうが、欧米人にとってはごく普通の調理方法なのでしょうね。我々は「キャンプでオーブンを使うなんて」と身構えてしまいますが、彼らにとってはフライパンよりも身近な料理道具なのかもしれません。だからブリキ細工でもキャンプ用のオーブンは必要なのでしょう。バックパッカー向けのオーブンというのもあるのですから。温度計が付いているからといって、オーブン自体、微妙な温度調整ができるようなシロモノではありません。そういえば温度計が摂氏表示に変わったときに、なまじ判るようになったものだから温度計が不正確だとクレームをつけてくるユーザーが増えたそうですが、欧米人にしてみれば鍋やフライパンに温度計が付いていないのだから、それ以上に気軽に使う道具は慣れや見た目の出来映えで判断すればいいと思っているのでしょう。
1996年のゴールデンウイークにFCAMPの全国オフが開かれたとき、みんなでパン焼きをしました。オーブンを持っているメンバーが持ち寄ってズラッと並べて…さすがにあれだけ数が揃ったのをみるのは初めてでした。
今年の夏(2004)、群馬県の野反湖で野外コンサートを聴いていると、客席の最後部で七厘を使ってトウモロコシを焼いているグループがいました。彼らはそのあと七厘にフライパンを乗せ、アルミホイルをかぶせてキャベツとベーコンの蒸し焼き⇒煮込みを作り始めました。キャンプオーブンもダッチオーブンも使わないけど、まさしくこれこそオーブン料理だと感心したのでした。
《5010B700 CAMPSTOVE OVEN》
コールマン
(1993年7月購入)
上の子がこの年の5月に生まれています。
「おめでとう、なにかプレゼントしよう。なにがいい?」
「コールマンのキャンプオーブン」
「ばか!」
断られ続けて仕方なく母ちゃんが自分で買いました